(11)　乙川医師は、本件抜管後、呼吸確保の措置をとらずに死亡するのを待ったが、予期に反して、しばらくすると、太郎が上体を持ち上げ、海老のように背をのけぞらせて体を痙攣させ、顔を苦もんするようにゆがませ、息を吸おうとすると胸がへこむという奇異呼吸を始め、ゴーゴーという気道の狭さく音と痰がガラガラと絡む音が部屋に響いた。

　同日のカルテには、「家族も患者がかわいそうで見てられないとのことで覚悟を決められつつある。」、「あまり汚れないうちに終わりにしてあげたい。」、「7時30分、抜管するもすぐに呼吸低下。」、「残念ながら再挿管とする。」と記載された。

　そうだとすると，本件において，人工肛門閉鎖術に伴う具体的な危険性の有無及び程度の如何により，控訴人に人工肛門閉鎖術の施術を受けることを強いることが酷であると医学的にも法的にも評価できると認められる場合には，控訴人が同施術を受けることにより，自己の肛門で自然排便し，快適な日常生活を送るということが確定的にできなくなり，人工肛門を装着した状態であることが最終的に確定するから，もはや「傷病に対して行われる医学上一般に承認された治療方法をもってしても，その効果が期待し得ない状態であって，かつ残存する症状が自然的経過によって到達すると認められる最終の状態に達したとき」に当たるとして，症状固定したものと認めるのが相当である。

　　したがって、原告が厳密な意味でのＰＴＳＤに罹患していると判断することはできない。