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顧問弁護士が労務問題(残業代請求、不当解雇等)を中心にテーマ別にメモするブログです。交通事故や刑事事件、借金返済問題なども扱います。
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残業代請求
当ブログでは、時間外勤務について触れている裁判例を紹介しています(つづき)。

2(ママ)判断
 そこで、本件移動時間が時間外勤務手当(残業代)の支給対象たる実勤務時間に当たるかどうかについて判断する。
 まず、労働協約の規定内容についてみると、一〇八条一項の「旅行中は所定就業時間勤務したものとして扱う。」
との規定は、旅行中においては、国内・国外旅行を問わず、所定就業時間内において、随時休憩、移動することがあるが、その間従業員の自主的時間管理に委ね、仮に実労働時間が所定就業時間に満たない場合であっても、所定内賃金は減額しないことを定めたもの(同趣旨の規定は、本件協定の二条三項において確認的に規定されている。)であり、一一五条の「所定就業時間外及び休日の乗車(船)時間は就業時間として取扱わない。」との規定は、所定就業時間外及び休日における移動時間は、時間外(休日)勤務手当の支給対象となる実労働時間とならない旨規定したものと解されるところ、移動時間は労働拘束性の程度が低く、これが実勤務時間に当たると解するのは困難であることから、これらの条項から直ちに所定就業時間内における移動時間が時間外手当(残業代)の支給対象となる実勤務時間に当たるとの解釈を導き出すことはできない。そして、本件協定の適法性・有効性については疑問を差し挟む余地はないと認められるところ、同協定は、海外旅行における時間外勤務(残業)の取扱いに関する特則であるから、同協定二条一項は、海外旅行の時間外手当(残業代)の算定に当たり、優先的に適用されるべきものである。そして、実際上の取扱いも、同規定のとおり、移動時間を実勤務時間から除く取扱いがなされてきたことが認められる。もっとも時間外手当(残業代)の支給申出は自主申告方式によっているため、必ずしも被告会社の厳密なチェックが及ばない場合が有りうるかも知れないが、その故をもって右認定を動かすに足りない。
 国内旅行においては、時間外手当(残業代)の算定に当り、移動時間も実勤務時間に含める取扱いであったことから、組合は、国内と国外旅行で区別を設ける理由に乏しいとして、本件協定の改定を申入れ、平成三年一二月二五日に締結(平成四年一月一日実施)された「外国旅行における勤怠および時間外勤務(残業)の取扱いに関する協定書」(横労協第九一ー八六号)により、所定就業時間帯外での移動を実勤務時間から除くものと規定され、前記取扱いが改められた。このように組合においても、本件出張当時、時間外手当(残業代)の算定について移動時間を実勤務時間から除く取扱いを是認していたものである。
 右事実に加え、本件出張当時、旅費規則(〈証拠略〉)二五条により、一旅行日当り金二〇〇〇円の海外出張手当が支給されており、これが右取扱いに対する代償的な措置となっていたことをも考慮に容れると、本件移動時間が時間外勤務手当(残業代)の支給対象たる実勤務時間に当たらないとした被告会社の判断に、何ら労働契約違反はなく、相当なものであったということができる。

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